非線形CAE勉強会

第30期非線形CAE勉強会・シラバス

 

「実験・計測とシミュレーションのクロスアプローチ」

第3日目(2016/12/10,10:00〜16:00)

3-1 イントロダクション
〔運営委員〕
3-2 シミュレーションから得られる気づきと実験
(結晶性/非晶性マイクロピラー圧縮試験とストラクチャーインフォマティクス)
〔渋谷陽二(大阪大学)〕

試験片のサイズを矮小化すると,結晶性材料の場合は,その領域内に存在する初期線欠陥の枯渇と近接する表面欠陥との相互作用が巨視的な変形挙動に直接影響を与える.結晶粒界や相界面という界面欠陥が存在する場合も同様である.非晶性材料についても,自由体積のゆらぎが原因と考えられるピラーサイズに応じた塑性変形に大きな違いが観察される.このような内部構造の応答を直接的に取り出す実験と,その初期条件が漸近したシミュレーションの関係性について紹介する.

  1. 結晶性マイクロピラー圧縮試験とシミュレーション
    • 1.1 粒界近接場の分子動力学シミュレーション
    • 1.2 粒界相互作用指数の予測と双結晶ピラーの弾性限
    • 1.3 転位の物理を考慮した構成式モデルの弾塑性有限要素シミュレーション
  2. 非結晶性マイクロピラー圧縮試験とシミュレーション
    • 2.1 分子動力学シミュレーションで予測される弾性限
    • 2.2  Zr基金属ガラスピラーのサイズ効果
    • 2.3 静水圧を考慮した構成式モデルの弾塑性有限要素シミュレーション
3-3 計測技術が導くシミュレーションの新しい方向
(熱流体計測に関する話題)
〔三坂孝志(東北大学)〕

初期・境界条件,モデルパラメータに不確実性を伴うような数値シミュレーションにおいて,それらを実計測データに基づいて推定することで数値シミュレーションの高精度化を実現する手法としてデータ同化法が利用されている.データ同化は主に気象分野で用いられてきた手法であるが,異分野での適用可能性も拓かれつつある.ここではデータ同化の概要と共に,熱流体工学分野においてデータ同化を利用するにあたり課題となる(1)計算コスト増加に対する対策と(2)計測の最適化を含む適切なデータ同化の問題設定に関して,簡単な応用事例を交えて紹介する.

  1. データ同化法の概要
  2. 流体工学分野におけるデータ同化
  3. 近似モデルによるデータ同化の高速化
  4. データ同化に基づく適応型(最適)計測
3-4 動作分析技術が導くシミュレーションの新しい方向
(モーションキャプチャーや非接触ひずみ計測が導く新たな足部数値モデル化の検討)
〔西脇剛史(アシックス)〕

スポーツ用品の設計において、着用時の人体の応答が、機能性評価における重要なパラメータになる。このため、シミュレーションを設計に適用する場合、着用者のモデル化は極めて重要なポイントとなる。
本稿では、複雑な挙動が可能であり、筋・腱・骨格・軟部組織などから構成される不均質構造体である足部のモデル化について、2種類のアプローチを論じる。
モーションキャプチャーを用いた、動作中の関節周りの座標軸決定や、モデル化の妥当性を検証するために実施した非接触ひずみ計測装置による動作中の足部表面のひずみ分布などが、シューズ実設計への活用を想定した足部モデル化に、どの様に活用されているかも紹介する。

  1. スポーツシューズ
    • Human Centered Design
    • スポーツシューズの構成素材と物理特性
    • 動作分析結果から抽出したスポーツシューズの要求特性
  2. 安定性設計手法
    • モーションキャプチャーを用いた動作解析
    • 足部モデル化手法
    • 安定性評価手法
  3. フィット性設計
    • 非接触ひずみ分布計測装置を用いた動作解析
    • 足部モデル化手法
    • フィット性設計
  4. まとめ
    • 実設計事例
    • スポーツ用具設計における実験と解析の在り方
3-5 高速変形における計測とシミュレーションによる予測精度の向上I
(ホプキンソン棒法を中心とした衝撃実験手法とそれを用いた評価)
〔西田政弘(名古屋工業大学)〕

身の回りには,衝撃,衝突に関する現象があふれており,ものづくり(設計,寿命予測)には欠かせない要素である.本講義では,まず,衝撃現象に大切な衝撃の基礎および応力波の伝ぱを説明する.材料の衝撃評価のためには,実験は不可欠で,低速から高速,超高速(1 km/s以上)までの広い衝突速度(変形速度)における実験装置を紹介する.また,ホプキンソン棒法と呼ばれる衝撃試験装置を中心に,速い変形速度での応力―ひずみ速度の測定方法,コンピュータシミュレーションのための材料特性や耐衝撃設計のための材料特性について説明する.

  1. 衝撃・衝突について(分類および基礎)
  2. 衝撃実験装置の紹介および強度評価
  3. 評価の例
  4. パラメータの決定(2−3例)