非線形CAE勉強会
第36期非線形CAE勉強会・シラバス
「複合材のCAE−力学・強度・プロセス−」
第3日目(2020/1/11,10:00〜16:50)
3-1 | イントロダクション 〔瀧澤英男(日本工業大学)〕 |
3-2 | 複合材料の基礎(実験から解析) 〔平山紀夫(日本大学)〕 |
複合材料は、2種類以上の異なる素材を組み合わせてつくられる材料である。それぞれの素材の長所を生かし、短所を補うことによって単一の素材にはない機能を実現することができる。例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、高い強度を持つ炭素繊維と軽量で耐食性に優れたプラスチックを組み合わせることで、単一の素材では実現できない比強度を実現している。
その一方で、複合材料の強度設計では、強化材、母材、材料界面といった複数の破壊状態が混在して強度の異方性が現れるため、その破壊強度の予測が非常に難しい。さらに、最近の研究では、強化材や母材にひずみ速度依存性があることが明らかとなり、衝撃強度の予測をより難しくしている。
本講演では、構成材料の機械的特性、従来から提案されている古典的な複合材料の破損則と、数値材料試験による複合材料の破損予測について解説する。そして、代表的な強化繊維が持っているひずみ速度依存性の実験データと複合材料の衝撃強度をFEMにより予測する場合の考え方についても紹介する。
- 複合材料の特性
- 1.1 複合材料とは
- 1.2 軽くて強い
- 1.3 設計できる材料
- 構成材料の機械的特性
- 2.1 強化繊維の機械的特性
- 2.2 マトリックス樹脂の機械的特性
- 2.3 最近の樹脂材料の開発動向
- 複合材料のFEM解析と破損則
- 3.1 最大応力説
- 3.2 最大ひずみ説
- 3.3 相互作用説
- 3.4 破損則の評価
- 3.5 数値材料試験による強度評価
- 複合材料の衝撃特性と数値解析
- 4.1 樹脂材料のひずみ速度依存性
- 4.2 強化繊維のひずみ速度依存性
- 4.3 ひずみ速度依存性を考慮した解析
- 4.4 繊維基材の形態が衝撃特性に及ぼす影響
- 複合材料の強度解析における注意点のまとめ
3-3 | 繊維強化プラスチックにおけるマイクロメカニクス 〔岡部朋永(東北大学)〕 |
近年、軽量化を目的とし、繊維強化プラスチックが幅広く利用されてきている。従来に比べ、荷重を負担する部位への適用が増えてきたため、設計者としても、より効率的かつ正確に利用しようという意識が高まっている。名前から容易に想像できるように、繊維が複雑に入っているため、その力学応答は異方性を有する。もちろん、それに伴い強度も異方性を有することとなる。そこで、本講義では、繊維・マトリックスの応力伝達機構から、等価剛性、強度・損傷理論に至るまでを解析的に紹介する。
- 複合則
- 微視モデルからの等価剛性算出法
- シアラグ解析
- 等価介在物法
- 微視的破壊モデル
- 連続体損傷モデルとマイクロクラック
- 積層板理論と有限要素解析
3-4 | 複合材CAE解析技術の紹介 〔林信哉(JSOL)〕 |
今日の製品開発では、CAE解析による設計支援が広く実施されており、製品開発の効率化に大きな成果を上げている。特に、近年はハードウェアの劇的な性能向上にともなって、大型製品を詳細にモデル化したシミュレーションが可能となってきている。さらに、新たな解析手法が考案され、CAE解析の適用エリアは年々拡大している。大型製品のCAE解析が適用されている分野として自動車の設計開発が知られている。現在、自動車分野では排出ガス規制が強化され、大幅な燃費向上を達成するために車両軽量化が求められている。この要求に対応するために、金属に代わる高強度・軽量材料として炭素繊維強化樹脂CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)が注目されているが、材料費はもとより加工コストの高さが課題となっている。そのため、CFRPの成形形状や強度を製品レベルで高精度に予測することができる新しいCAE解析技術が求められている。本講演では、具体的な解析事例により最新の複合材CAE解析技術を紹介する。
- 複合材CAE解析について
- 連続繊維強化複合材のプレス成形解析
- 不連続繊維強化複合材の圧縮成形解析
- 複合材の強度予測CAE解析技術
- まとめ