非線形CAE勉強会

第21期非線形CAE勉強会・シラバス

 

第3日目(2012/6/9,10:00〜17:00)
 CAEこれからの10年
 (中央大学駿河台記念館)

3-1 解析のベンチマーク これからの10年に向けて
〔小林卓哉(メカニカルデザイン),梅津康義,遠藤明香(JSOL)〕

ベンチマークという用語は,本来,測量技術の分野の用語であり,位置や高さに関して,その水準あるいは基準を規定する定点を示す.特定の点をベンチマークポイントに定め,それを基準として建物や構造物の配置を決めるような使い方をする.

ここから派生して計算分野では,コンピュータシステムを比較評価するための標準問題に対してベンチマークという用語が使われるようになってきた.

CAEの分野でも,マニュアルに記載された標準問題,理論解や実験結果との比較,あるいはユーザ会などで示される事例などは,すべからくこのベンチマーク的な発想にしたがっている.いわゆる「ケーススタディ」と呼ばれる手法は,このようなベンチマーク問題を囲んで評価と解釈を与え,何らかの結論を明示する手法である.

しかし今日のわれわれを囲む環境は,CAEに限らず,この種のベンチマークポイントを容易に見出すことができない状況にまで複雑化が進んでいる.標準問題,すなわち課題に対するベストプラックティスを情報として提示するだけの手法は,現実と比較して十分ではないということである.

実際,ビジネススクールのような最近の教育の現場では,ケーススタディに代えて「ケースメソッド」という問題発見型の教育,すなわち討議を重ねることによって複雑系に対する当面の意志決定をめざす教育が行われている.この手法は教育段階に現状はとどまっていると見られ,結論の明示に至ることは必ずしも期待できないが,単なる情報の提供とは明らかに異なる視点に立つものである.

今回の講義では,ベンチマークという手法が既に過去のものになりつつあることを踏まえ,これまでの協会の活動を振り返り,今後を展望する.

3-2 材料モデリング分科会の取り組み
〔寺嶋隆史(明治ゴム)〕

材料モデリング分科会では,幅広い非線形材料のモデリング技術と関連する技術情報を収集する場として活動している.最近の活動の柱の一つである汎用コードの材料ユーザサブルーチン開発を中心に活動内容を紹介する.

  1. 2011年度の分科会活動
  2. 材料構成則ユーザサブルーチン開発の取り組み
3-3 欧州のCAE教育,産学協同の試み
〔近藤晶子(CAE Marketing)〕

過去10年でCAEの利用者数や適用分野はさらに拡大し、CAEへの要求やトレンドも様変わりしてきた。その流れの中において、多くの企業が課題と考える項目の中に、必ず共通して挙げられるのが「人材教育」である。これはCAEが企業に次第に定着し始めた10年前も今も変わらない。そしてこれは、ソフトウェアやハードウェアの性能向上に対し、生身の「ひと」のスキルアップを正しく行うのがいかに難しいかを物語っている。ここでは、数々のCAEソフトウェアを生み出しCAE先進地域の一つでもある欧州のCAE教育を取り上げ、そのユニークな点などを報告する。

3-4 V&Vに関する最近の状況
〔越塚誠一(東京大学)〕

コンピュータシミュレーションを産業で実際に用いるには、結果に対する信頼性の確保が必要不可欠である。V&V(Verification and Validation)はシミュレーションの信頼性を確保するための方法論として世界的に広がりを見せている。V&Vには品質マネジメントに関するものと、モデリング&シミュレーションに関するものがある。ここでは、V&Vの概要、日本と海外の最近の動向、原子力分野でのV&Vの適用例に関して紹介する。

  1. V&V (Verification and Validation)の概要
  2. 日本と海外の動向
    • 2-1 品質マネジメント
    • 2-2 モデリング&シミュレーション
  3. 原子力分野でのV&Vの適用例
3-5 これからのCAE
〔菊池昇(ミシガン大)〕