非線形CAE勉強会
第28期非線形CAE勉強会・シラバス
「CAEのカスタマイズ 〜精度・効率・運用の差別化〜」
第4日目(2015/12/13,10:00〜16:40)
4-1 | 汎用CAEツールによるマルチフィジックス解析〜原理と解析アプローチ〜 〔増田俊輔(サイバネット)〕 |
近年、解析対象の物理的なメカニズムの複雑化に伴い解析をより現実に近づける必要性が高まっており、またマシンの高性能化も相俟って多くの分野でマルチフィジックス解析が実施されるようになった。マルチフィジックスは、例えば翼のフラッター現象のような気流と翼の振動など、複数の場の相互作用を取り扱う問題だが、解析では扱う物理場や相互作用の強弱によって様々なアプローチが存在する。本講では、汎用CAEツール(ANSYS)を例に、マルチフィジックス解析の原理とアプローチを紹介する。
- マルチフィジックス解析とは
- 1.1 概要
- 1.2 解析手法の種類〜ダイレクト連成とシーケンシャル連成〜
- ダイレクト連成
- 2.1 原理
- 2.2 アプローチ
- 2.3 解析事例
- シーケンシャル連成
- 3.1 原理
- 3.2 アプローチ
- 3.3 解析事例
4-2 | モーター設計におけるマルチフィジックスの重要性 〔山田隆(株式会社 JSOL)〕 |
ハイブリッドカー、電気自動車をはじめとして多くの場面で”電動化”が進んでいます。そこでは電気エネルギーを機械エネルギーに変換するデバイスとしてモータが活躍する場面が増えてきました。モータは登場から100年を超える歴史を持つ成熟機器ですが、今でも性能向上を目指して開発が進められており、そこではシミュレーションが必須のツールになっています。特に近年、高エネルギー密度化が進む一方で、高効率、制御性、静粛性などを成立させるためにマルチフィジックスが重要な役割を果たすようになってきました。一方、実務の場面では、電気設計者と機械設計者には大きな壁があり、その壁を乗り越えるためにはツールによるサポートが重要になります。本解説ではモータ設計における解析の現状とその課題についてマルチフィジックスを念頭に説明します。
- 今日のモータと課題
- ・モータのメカニズム
- ・利用シーン
- ・設計・開発課題
- モータの解析
- ・電磁界解析の基礎
- ・モータの解析の特徴
- ・適用事例
- マルチフィジックスの導入
- ・諸々の問題:振動、熱、トルク、効率、制御
- ・アプローチと事例
- 今後の課題
- ・技術的な課題
- ・文化的な課題
4-3 | 汎用FEMソフトウェアを用いた固体酸化物燃料電池のマルチフィジックスシミュレーション 〔村松眞由(東北大学)〕 |
固体酸化物燃料電池(SOFC)の性能評価には複数の現象を考慮したマルチフィジックスシミュレーションが必要である.本講では,当研究グループで構築したSOFCのマルチフィジックス解析手法を説明するとともに,各メーカーで開発されている様々な形状のSOFCの解析を,メーカー自身で簡単に実現するため,当該手法をAbaqusを用いた解析ツールへと展開した例を紹介する.
- SOFCのマルチフィジックス
- 支配方程式系と連成手法
- Abaqusを用いた解析ツールの開発
- 数値解析例
4-4 | 不連続繊維強化樹脂のプロセスチェーンシミュレーション 〔大浦仁志(株式会社 JSOL)〕 |
不連続繊維強化樹脂を用いた製品は、繊維分散による強化形態をとる。そのため、製品の構造性能を予測する上では、流動時に発生する繊維配向分布に伴った材料特性変化を考慮することが重要である。そこで、有効な予測手法が、成形解析による繊維配向予測/平均場法による材料特性予測/構造解析の各ソルバーを連携したプロセスチェーンシミュレーションである。本講義では、プロセスチェーンシミュレーションの理論的背景や仕組み(ユーザーサブルーチンの使用法、スクリプトを利用したデータ連携など)について説明するとともに、それを用いた事例について紹介する。
4-5 | 偏微分方程式の自動化解法を用いたトポロジー最適化 〔川本敦史(豊田中研)〕 |
近年,偏微分方程式の有限要素法に基づく自動化解法が開発され,商用ソフトCOMSOLや非商用ソフトFEniCSなどが登場した.これらのシステムは,UFLという自然な言語で記述された偏微分方程式を有限要素法の算法に則って,自動的に離散化解法を実装する.ユーザーは,有限要素法の煩雑なプログラミングから解放され,マルチフィジックス問題などの複雑な問題も,支配方程式を定式化してUFLを記述するだけで,迅速に数値解析を実行することができる.本研究では,この仕組みをトポロジー最適化のアルゴリズム開発に利用している.本講演では,ヘルムホルツ型偏微分方程式を用いたフィルターによる設計空間の正則化手法と時間発展方程式を用いたトポロジー最適化手法を紹介する.
4-6 | OpenFOAMの概要とカスタマイズ事例 〔今野雅(株式会社OCAEL)〕 |
昨今の計算機能力の飛躍的向上により,様々な分野でCFD(Computational Fluid Dynamics)解析を用いたCAE(Computer Aided Engineering)が一般化してきた.また,CFD解析を行うにあたって,計算コードの検証や計算結果の検証を行なって,計算結果の品質を保証しなければならないとするV&V(Verification and Validation)が近年重要視されており,ベンチマークといった計算結果の妥当性検証のみならず,その計算手法をオープンにすることが求められる時代となった.以上のような背景から,大学や研究機関の研究者のみならず,企業の一般CFD解析業務においても,ソースがオープンであるため計算コードの検証が可能であり,京に代表されるスーパーコンピュータやクラウド,PCクラスタなどの並列計算機においてもライセンス費用の問題が少ないオープンソースのCFDツールボックスであるOpenFOAMの使用例が急速に増えつつある.本講義ではOpenFOAMの概要を説明すると共に,OpenFOAMのカスタマイズ事例を紹介する.
4-7 | 「総括」と「次回の予告」 〔運営委員〕 |