非線形CAE勉強会

第34期非線形CAE勉強会・シラバス

 

「データサイエンスとCAE」

第3日目(2018/12/22,10:00〜16:40)

3-1 イントロダクション〜計算力学の研究動向とデータサイエンス〜
〔寺田賢二郎(東北大学)〕

最近の国際ジャーナルや国際会議で発表された研究のレビューを通して、計算力学とCAEの研究動向を探り、主要な研究者による代表的な解析例や自身による最新の研究成果を紹介しながら今後の展望を述べる。特に、今回のテーマである「データサイエンス」とCAE(あるいは計算力学)の融合を目指した最近の研究に焦点をあてて、どのような目的でどのような理論や技術を創り出そうとしていのか紐解いてみる。

3-2 統計学の基礎と信頼性設計-伝統的な理論とこれから-
〔大竹雄(新潟大学)〕

設計・制御・意思決定を合理的に行う枠組みのひとつに「信頼性設計」があります.信頼性設計は,対象施設が要求する性能を満足する確率(信頼性)もしくは性能を満足しない確率(破壊確率,リスク)を定量化することを要求します.従って,伝統的な信頼性設計は,確率論に基づいて構築されてきました.しかし,対象施設の性能を予測するための各種因子には不確実性(材料の不均質さ,自然環境などの外力特性など)があり,事前に把握できないものが多いです.従って,「統計的推定」が重要な作業として位置づけられます.本講義では,信頼性設計の特徴と統計学・逆解析の基礎を概説した上で,データサイエンスとの融合の可能性について具体的な事例を交えて紹介します.

  1. イントロ(信頼性設計,国内外の動向)
  2. 信頼性解析の基礎(統計学の基礎)
    • ・期待値の性質/バラツキと統計的推定誤差
    • ・期待値を用いた信頼性解析/MCS
  3. 信頼性更新理論の基礎(逆解析の基礎)
    • ・ベイズ推定/スパース推定
    • ・特徴抽出(主成分分析,固有直交分解)
  4. データサイエンスと信頼性設計の融合事例
    • ・上記の基礎理論を使った事例を紹介
3-3 機械学習とシミュレーションの融合による設計・計画の高品質化・高効率化
〔鷲尾隆(大阪大学)〕

シミュレーション技術及び機械学習技術の発展に伴い、ビッグデータの機械学習による解析のみならず、大規模シミュレーションと機械学習を融合させることにより、新しい知識を創出する可能性が拡大している。データ同化をはじめとして、シミュレーションと機械学習の融合には様々な展開の方向性が考えられるが、ここではシミュレーションに学習・探索アルゴリズムを組み合わせ、シミュレーション対象において目的事象が起きる条件や最適状態を実現する条件を探索したり、それら条件に至る途中の生起事象やシナリオを探索する技術の研究開発と、それによる工学的に高品質な設計・計画ソリューションを高効率に自動導出する応用について、近年の我々の研究進展を述べる。そして、非常に低確率でしか発生しない自然災害の生起シナリオを発見したり、工学的なシステムにおいて同じく特殊な条件でないと発生しない不具合やそれに至るシナリオを効率的に見つけ出すシミュレーションの実現に適用した具体例を紹介する。このような融合技術は、科学や工学におけるシミュレーションの適用問題領域を飛躍的に拡大する可能性がある。

3-4 深層学習による画像認識
〔白山晋(東京大学)〕

ニューラルネットワークは,脳の情報処理にヒントを得て生まれ,脳を模倣するように発展してきた学習器として知られている.ディープラーニング(深層学習)は,それまでのニューラルネットワークの欠点を補う形で提案されたものである.文字認識や画像認識などで高い性能が示され,研究が急速に進むことになる.
ディープラーニングを“人工的に知識を取得する手段,あるいは生み出す仕組みそのもの”としてみれば,人工知能の文脈でその発展を見ていくのがよいかもしれない.一方,特徴量抽出の一つの方法や最適化問題の一つの解法手段などというような見方をすれば,脳の情報処理を模倣するという意味(意義)は薄れる場合も多い.ここでは,後者の立場で,深層学習による画像認識の方法を概説する.

  1. イントロダクション(深層学習の衝撃)
  2. 回帰と分類
  3. 学習による回帰と分類
  4. 画像認識の基礎
  5. ニューラルネットワークの基礎
  6. 画像認識のための深層学習の基礎
  7. 深層学習の応用例