非線形CAE勉強会

第39期非線形CAE勉強会・シラバス

 

「非線形CAEこの20年の振り返りと展望」

第4日目 シンポジウム(2022/ 1/22, 9:30〜16:30)

4-1 非線形CAE勉強会20年の歩み
〔寺田賢二郎(東北大学)〕

発端は、2001年2月23日付けの協会創設者の菊池昇先生からの一通のメールでした。いや、元を正せば、そのメールの動機付けたのは、ミシガン大学・菊池研究室(Computational Mechanics Laboratory)の一人の卒業生の菊池昇先生に対する進言でした。本発表では、非線形CAE勉強会を何故、どのような経緯で開催することになり、どのように発展して来たのかを、可能な限り史実に基づいてお伝えします。開催に至るまでのメールのやり取りは、個人名が多く出てきてかなりきわどい内容ですが、非線形CAEに対する思いや期待の詰まったもので、我が国のこの分野をどのように育て、形作っていくべきかといった哲学や方法論について真剣に議論したやりとりの断片を紹介したいと思います。また、20年39期に渡る勉強会の内容を振り返り、その時代の歩みを振り返ってみたいと思います。

4-2 代表的な汎用構造解析ソフトウェアを作った人達に想いを馳せる
〔石井惠三(くいんと)〕

汎用コンピュータの概念が確立した1960年代半ばから、それに歩調を合わせるように汎用構造解析ソフトウェアの開発も始まった。
 今でも発展を続けているNASTRAN、ANSYS、ABAQUS、LS-DYNAについて、発表者が理事をしていた日本計算工学会の会誌(2004年〜2007年)に、これらのソフトウェアを開発または開発を指揮した Dr. R. H. MacNeal、Dr. J. A. Swanson、Dr. D. Hibbitt、Dr. J. O. Hallquistの寄稿/インタビュー記事が掲載された。
 今では若い技術者の目に触れることは少ないと思うので、要約して紹介する。
 古き良き時代のワクワクするようなチャレンジの歴史の上に、これらのソフトウェアの今があることを理解いただければ嬉しい。

4-3 実験と解析と基礎理論の今と昔
〔西方恵理(非線形CAE協会元理事)〕

非線形勉強会が始まった頃から比べると解析者の環境が変化してきています。解析を使って開発を進めていると解析結果と実験結果が整合しない事があります。問題を切り分けて解析に反映することで実験結果と整合する場合があります。そんなポイントをお伝えしたいと考えています。

4-4 私が見てきた振動・音響解析
〔井戸浩登(非線形CAE協会元理事)〕

私はCAE技術の研究者ではないので、ひとりの機械設計者(だった)の視点から、自分が担当したNV(Noise and Vibration)解析分野の技術を振り返ってみる。
 前半は、1960年代の後半から1980年代の末期まで、振動解析の中核技術となった実験振動モード解析について振り返る。実験モード解析技術の開発の中心であったシンシナティ大学や、CAEという言葉を創ったジャック・レモン氏との関わりについても触れてみたい。
 後半では、1980年代から商用コードとして現れた、境界要素法、有限要素法を中心とした音響シミュレーションの技術について振り返る。Acoust/Boom, Vibro-Acoustics, WAON, Sysnoise, Virtual.Lab Acoustics, NX-NASTRAN ... などの音響ソルバーを業務で使ってきたので、当時の技術トピックスとその変遷について紹介してみたい。

4-5 動的解法の今と昔
〔梅津康義(JSOL)〕

動的陽解法のDYNA3Dが日本に紹介されてから,30年以上経った今,文字通り衝撃的な当時の状況とその後に起こる,動的問題への対応方法が革新的に変化した経緯を振り返る.1980年代に落下解析への適用性が認められたものの,当時としては異端児的な存在であった.その後1990年以降の自動車衝突解析,板材のプレス成形解析,建築構造物の地震応答解析への適用など,強みを生かしつつ、また弱みを補いながら適用分野を広げ信頼を得てきた.その経緯を事例を含めて紹介する.

4-6 20年,CAEは思想たりえたか
〔小林卓哉(メカニカルデザイン)〕

今日の工学は,社会との整合性を高めることに評価の重点が移りつつある.人間の生死に直結する問題に工学が関わり、かつ専門家でさえ十分な説明を与えることが難しいことがその背景にある.自然災害の苛烈はその端的な例である.一方,高真空,高純度など,これまで科学の仮定として扱われてきたような技術が,工場規模で実現されるようになってきた.その結果,製品の複雑性から来る開発負荷の際限のない増大は,シミュレーションを伴わない設計を許さない.と言いながら・・・,解けない問題はいつまでたっても解けないのが現実である.皆さんと共に考えたい.

4-7 人生100年時代へ向けての研究と研究マネージメント:60歳過ぎても基礎研究は出来る
〔菊池昇(ミシガン大学 名誉教授)〕
4-8 総括
〔平郡久司(ブリヂストン)〕