非線形CAE勉強会

第2期非線形CAE勉強会・シラバス・第2回

 

第2回:材料と製造の非線形CAE [ 9月29日(日) ]

イントロダクション 「加工にまつわる非線形性」
担当:高野@阪大

第2日目のテーマ「材料と製造の非線形CAE」のイントロダクションとして、金属・プラスチックなど材料別に特徴的な成形シミュレーションを例にとり、材料非線形性、大変形、接触といった非線形性を具体的に紹介する。特に、「温度」が材料加工のキーパラメータであるため、材料特性の温度依存性、相変態について詳しく述べる。また、材料加工シミュレーションにおける入力と出力、解析結果の評価、設計へのフィードバックなど現状での留意点の問題提起をする。具体的項目は以下の通り:

  1. 各種の材料加工
  2. 非線形性と材料加工シミュレーション:問題提起
  3. 相変態とプロセス設計:金属の溶接・接合
  4. 温度依存性:プラスチックの真空成形
  5. 接触と型設計:プラスチックの真空成形
  6. 異方性:強化プラスチックのRTM成形
  7. 熱硬化性と熱可塑性:強化プラスチックの固相成形
  8. 加工にまつわる非線形性のまとめ
講義1 「材料非線形と各種構成則」
担当:野口裕久@慶應義塾大学

この講義では、まず、非線形有限要素法の中で、構成則が受け持っている役割について明記し、材料の非線形性は、その定義がユーザに比較的自由に開放されていることを示す。また、定義に際して守らなければならない約束毎についても触れる。その上で、一般的な材料非線形モデルである、弾塑性、粘弾性、粘塑性、超弾性について紹介する。有限要素法の定式化に関しては、まず弾塑性モデルについて、有限要素モデルの中でどのように implement されているのか解説する。いわゆる古典的なモデルから現行の汎用有限要素法に用いられているモデルまでを開発の経緯にそって述べる。更に、幾何学的非線形性も併せて考慮する際の構成式モデルと使用する応力、ひずみについて整理する。最後にゴムなどの超弾性体について、その考え方と定式化に触れ、超弾性体の特殊性、更には大ひずみ弾塑性問題の共通点等について解説する。

講義2 「板・シェルの有限要素法と幾何学的非線形性」
担当:野口裕久@慶應義塾大学

この講義では、classicalな理論ではなく、現在の汎用コードが採用している modern な板・シェルについて解説する。これらは、Mindlin/Reissner 型の面外面外せん断変形を許す薄肉/厚肉兼用要素である。ここでは、通常の3次元連続体要素を退化(degenerate)させてまず曲面シェルを作成し、更に退化させて平板要素を作成する。また、シェル/板要素の開発には欠かせない「ロッキング」の回避についても、現在の汎用コードが用いている手法について紹介する。次に幾何学的非線形性については、シェルのような構造要素で考慮すべき大変形・微小ひずみ問題に特化して話をすすめる。いわゆる塑性加工のような問題は除外する。最後にシェル/板構造の大回転(Large Rotation)のとりあつかいについて述べる。

講義3 「有限変形/境界の非線形性と有限要素法」
担当:平郡@ブリヂストン

有限要素法を用いて非線形問題の解析を実施する場合、非圧縮性や接触問題についての知見が欠かせないことがある。金属の塑性状態やゴム材を解析する場合、体積が変化しないという非圧縮性に対する考慮を怠ると、正しい解が得られないケースがある。また、実際の構造物では、いたるところに接触が生じており、この条件を適切にモデル化することが解析のキーポイントなることも多い。本講義では、これらの問題を拘束条件という切り口から整理し、その定式化と考慮すべき点について解説する。具体的な項目は以下の通りである。

  1. 拘束条件とは
  2. 拘束条件の定式化
  3. 非圧縮性ロッキング
  4. 非圧縮性有限要素
  5. 接触問題(垂直方向)
  6. 摩擦問題
実演と解説1 「塑性加工における成形シミュレーションとスプリングバック解析」
担当:湯川@名古屋大学、岩田@豊田中央研究所
  1. 塑性加工のシミュレーションと非線形(湯川)

    材料の成形法の中でも特に塑性加工に的を絞り、どのような非線形性がシミュレーションに大きな影響を及ぼすのか、どこに気をつけなければならないのかについて、個々の塑性加工法を縦糸に、それぞれの非線形性を横糸としてその関係を解説する。

    • ・各種塑性加工法の解析にかかわる非線形性
    • ・材料非線形・幾何学的非線形と塑性加工
    • ・工具との接触
    • ・塑性不安定
    • ・割れ・破壊
  2. スプリングバック解析(岩田)

    板材成形において重要な形状精度不良予測技術に関連する計算および現象モデリング技術について解説し,実成形の事例についても紹介する.

    • ・スプリングバック量に及ぼす影響因子
    • ・計算技術(成形速度,要素など)
    • ・現象モデリング(材料の変形挙動,素材にかかる張力分布)
    • ・実成形の事例紹介
実演と解説2 「素材メーカーのCAE、射出成形シミュレーションTIMON」
担当:東レ株式会社 エンジニアリング開発センター 第2開発室 CAEグループ 田中 太

東レ鰍ナは、樹脂・複材ユーザーの製品開発、社内生産プロセス最適化などに広くCAEを適用する一方、独自開発による射出成形CAEシステム「TIMON」の事業化を展開してきた。本解説では、東レのCAEへの取組みについて紹介した後、「TIMON」の実演を交えて、射出成形シミュレーションの現状について説明する。さらに、動的陽解法の適用による樹脂ブロー成形、衣服着装シミュレーション技術開発についてもあわせて解説する。

  1. 東レのCAEへの取組み
  2. 射出成形シミュレーションの現状解説
  3. TIMONシステム紹介
  4. 動的陽解法によるシミュレーション技術開発
    樹脂ブロー成形から衣服着装シミュレーションへの展開